三陸沿岸の冬作は凍害に注意

2021年1月25日

 気候学の教えによれば、一般に沿岸は内陸に比べて夏涼しく冬温かい。このため園芸作に適すると言われ、全国的にも海岸に近い地域で園芸生産が盛んです。ところが三陸沿岸の冬の温度の特徴を調べたところ、三陸には特異的に凍害リスクの高いエリアがあることが分かったので、注意喚起します。

 三陸各地のアメダス気温と盛岡の気温を比べました。冬は内陸に比べて日平均気温や日中の最高気温が高く、温かい傾向がありました。しかし岩手県沿岸北部の久慈や普代など最低気温が内陸の盛岡と同じくらい低いところがありました。植物には軽い寒さに遭うと、さらに厳しい寒さに備えて生長を止めて耐凍性を高める能力があります。初冬に温かい日が続くと生長を続けて耐凍性が弱まり、その後に急に寒さが来ると凍害を受けやすくなります。

 下の図は冬に初めて凍害を起こすような低温(-5℃)が訪れる直前10日間の平均最高気温です。この値が大きいほど凍害リスクが大きいことを意味します。三陸の中で久慈から山田にかけた一帯では、凍害リスクが内陸の盛岡よりもはるかに大きいことが分かりました。この一帯では冬に日中の天気が良く、最高気温が上がります。一方で夜間も天気が良いので、放射冷却で最低気温が下がります。釜石以南の沿岸南部も天気が良いですが、最低気温があまり下がらないので、凍害リスクはそれほど高まりませんが、それでも内陸の盛岡に近い値だから注意が必要です。詳しくはこちらの論文をご覧ください。

 凍害リスクの大きい地域でハウスやトンネルで葉物野菜などを栽培する場合は、冬が近づいたら昼の温度が上がらないようハウス・トンネルの換気を行い、耐凍性を高めることが重要です。

編集者 岡田益己

姫かりふ®の作型と収穫期

2020年12月22日

三陸沿岸の3地点(久慈、宮古、大船渡)の気温データを使って姫かりふの収穫期を予測したので、参考資料として掲載します。

陸前高田の現地圃場で実施した栽培試験結果を解析して、気温の経過から収穫期を予測するモデルを作りました(詳しくはこちら)。このモデルで各地30年間の収穫期を移植日ごとに求めました。表では中央値±25%の範囲(平均的な50%の年の範囲)を「収穫期の目安」として示しました。また「最早」と「最晩」は30年間で最も早い年と最も晩い年です。セル苗の移植を想定していますが、春の早い移植では不時出蕾の危険性が高いので、4月15日以降の移植日を対象とします。品種は姫かりふに適するオレンジ美星と美星(サカタのタネ)です。表1は露地栽培を、表2は窓を開放した雨よけハウス栽培を、表3は寒い時期にべたがけやトンネルを併設した保温ハウスを想定しました。

「収穫期の目安」に示す期間の幅が小さく、さらに「最早」と「最晩」に示す日付が「目安」に近いほど、年々の変動が少なく計画性の高い生産が可能なことを示します。4月から8月までの移植では、収穫期の年々変動が小さく、計画的な生産ができることが分かります。しかし9月以降の移植では、沿岸の北部から次第に変動が大きくなります。例えば、久慈で9月1日にオレンジ美星を移植して露地栽培すると、11月中には収穫が可能ですが、9月15日移植では最も寒い年に4月まで収穫できないという予測です。わずか2週間の遅れが年々の変動を大幅に拡大します。一方、大船渡で保温ハウスを使えば、10月1日移植のオレンジ美星を年内に収穫できます。冬を越す作では凍害を受けやすいので、できるだけ年内に収穫期を迎えるよう作付けすることがポイントです。

2品種のなかでオレンジ美星が美星(白色)よりも早生です。高温期(7, 8月)の出荷ではオレンジ美星の色は淡いクリーム色に変わります。気温が氷点下3〜5℃程度に下がると花蕾に凍害が発生します。美星の方がオレンジ美星よりも凍害に強い(花蕾が凍結しにくい)傾向がありますが、冬期の栽培では日中のハウス気温の上昇を抑えて、花蕾の耐凍性を高める必要があります。

編集者 岡田益己

四季成り性イチゴ品種‘なつあかり’の増やし方

2019年7月2日

‘なつあかり’は良食味の夏秋どりイチゴ品種で、購入した苗を自分で増殖できる(ただし増殖した苗を他人に譲渡・販売はできない)。ところが近年、四季成り性なのに夏に花の咲かない株が増え、苗の販売をやめる業者や栽培を断念する生産者が出てしまった。東北農業研究センター、青森県産業技術センター、岩手大学が共同して原因を調べたところ、開花不良は遺伝的な変異で、その性質がランナーによる増殖で次世代にも引き継がれることが分かった。また開花不良株は正常株に比べて数倍のランナーを発生するので、気づかないと2、3年で不良株だらけになることも分かった。詳細は、専門誌に投稿予定の論文をご覧いただきたい。

 ここで言う開花不良とは、7月以降に新たな花房が発生せず、夏から秋の果実を収穫できない現象である。四季成り性品種は、冬に花芽ができて春に開花する性質と春以降に花芽ができて夏以降に開花する性質を併せ持つ。前者は一季成り性品種と同じ性質である。開花不良株は後者の性質だけを失ったので、春(6月あるいは7月初めまで)は開花する。したがって7月中旬以降の開花の有無が、正常株と不良株を見分ける重要なポイントとなる。以下、ランナーを用いた増殖の注意点を記す。

  1. ランナーを採るための親株は、屋外か無加温のハウスで越冬させて、十分に低温に当てる。低温遭遇が不十分だとランナーが発生しない。日中の気温が15℃程度を越えると低温の効果が抑制されるから、晴天日はハウスの窓を開ける。屋外では積雪下が望ましい。積雪が少ない年もあるから、べたがけをすると良い。乾燥や過度な寒さによる枯死防止に効果がある。
  2. 親株は3月中~下旬にハウス内の栽培床に植え付ける。親株を早く植えれば、それだけランナーも早く発生するので、遅くても4月上旬には植え付けを終えたい。容器栽培の場合は一株あたりの培地量を4~5リットル以上とし、肥培管理に努める。屋外で親株を育てる場合は、前年の秋、最低気温が5℃以下になる前に植え付ける。春先からトンネルで保温するとランナー発生が早まる。
  3. 6月中旬(15日くらい)までは親株の花房を取り除く。この時期までに発生する花房は晩秋から春にできた花芽(一季成り性)の可能性が高い。
  4. 7月中旬以降、週に一回程度、親株を観察し、正常株か不良株かを見分ける。7月から9、10月まで連続的に花房が発生する株が正常株である。花房頂花の開花を観察した日を記録する。花房をそのまま残すときは、花房にラベルをつけて、後から出てくる花房と区別する。花が一輪しか付かない花房は、弱勢花の可能性があるからカウントしない。一季成り性品種でも夏に弱勢花が咲くことがある。
  5. 親株から実を採らない場合は、開花を記録した花房を切除すると良い。観察の間違いも減るし、ランナーの発生も促進される。
  6. 親株から実も収穫する場合は、最初に発生するランナー(太郎)を鉢受けし、活着したら切り離して、7月上旬までにベッドか畑に植え付けて増殖親とする。太郎がどの親由来か間違えないようラベルする。親株では花房発生を観察しながら、実を収穫できる。
  7. 7月以降開花しない株は不良株の可能性が高いから、親株、ランナーを含め全て処分する。
  8. 7月あるいは8月初めで開花を終え、その後に花房が発生しない株もある。このような株は収穫を期待できないから、処分する方が良い。
  9. ‘なつあかり’は発生するランナーが少なく、さし芽の成功率も高くないので、確実に苗を確保するために鉢受け採苗を推奨する。発生したランナーは順次鉢受け(畑の場合は根下ろし)する。このとき、全てのランナー(苗)がどの親由来か分かるようにラベルする。ランナーは11月に親(または増殖親の太郎)から切り離す。
  10. 翌年の増殖には、観察記録を参考にして開花持続性に優れた親株を選び、その株由来の充実した苗を利用する。増殖用の親株は毎年更新し、2年、3年株は使わない。

以上のように注意深く採苗しても、開花不良株が突然発生する可能性がある。毎年、7月以降の開花を確認した株から苗を採ることが不良株を増やさないポイントである。なお開花不良の変異は、‘なつあかり’に限らず他の四季成り性品種でも起こる可能性がある。他の品種で開花不良が疑われる場合は、ここに記した手順を参考にされたい。

(本稿の取りまとめにご協力いただいた方:濱野惠、本城正憲、伊藤篤史、町田創、加藤一幾、文責:岡田益己)

編集者 松嶋 卯月

もみ殻培地の混合土の課題と対策

2017年9月20日

このサイトでもみ殻培地は,安くて簡単に様々な作物を育てられると紹介しました。とくに夏どりイチゴの高設栽培用として,もみ殻を容積比で75%,小粒の赤玉を25%混合し,これに炭の粉を3%程度加え,肥効調節型肥料(エコロング)を使う培地を奨めてきました。しかし,この組成の培地をいろいろな場面で使ってみると,いくつかの課題も明らかになってきました。ここでは次の2点について,対策を考えます。
● 水持ちが悪い
● 微量要素欠乏が出やすい

1.水持ちが悪い
イチゴの高設栽培では「活着が悪い」,トマトのポット育苗では「育ちが悪い」(一方で「しまった良い苗ができる」)という声が聞かれます。これは保水力が小さいためで,とくに雨風にさらす年月が短いもみ殻で起こりやすい。頻繁に灌水すればよいですが,そういうわけにもいきません。
保水力を高めるためには,1)赤玉の割合を増やす,2)赤玉より小粒の土を使うという2つの方法があります。赤玉の割合を増やす場合は,最大でも40%程度にとどめてください。これ以上増やすと,軽量で通気性が良いというもみ殻の長所が損なわれてきます。2)の方法では,赤玉よりずっと小粒(顆粒状)の土,例えば,水稲育苗用の粒状培土(肥料が少し入っていますが,その影響は小さい)を使います。土の割合が同じ25%でも,小粒だと容積当たりの土の重量が増え,結局,土の割合を増やすことになります。下の写真は,粒状培土と赤玉(小粒)の比較です。水稲育苗の覆土用培土は無肥料なので,粒状培土より良さそうですが,微量要素欠乏が出やすいのでお奨めしません(次項を参照)。
粒状培土を使うときは,ほんの少し水を加えて湿らせてから,もみ殻と混合してください。乾いたまま混ぜると,もみ殻と分かれてしまい,うまく混ざりません。加える水の量は,粒状培土の容積の5〜10%です。加減を見ながら加えてください。

左:赤玉(小粒)を使ったもみ殻培地, 右:水稲育苗用覆土を使ったもみ殻培地

 

2.微量要素欠乏が出やすい
水稲育苗の覆土用培土を25%混ぜたもみ殻培地で,高温の時期にトマトをポットで育苗したところ,鉄とホウ素の欠乏と見られる症状が多発しました。同様の培地でトマトを高設栽培しても,同じ症状が出ました。下の写真をご覧ください。ホウ素欠乏は,先端葉が黄化したりエビのように巻いて小葉化します。一見,ウィルスと見間違う症状です。こうした微量要素欠乏症は,これまでのイチゴ栽培では気づかなかった症状ですが,イチゴに比べて生長が旺盛なトマトで明らかになりました。生長が遅いと,炭からゆっくりと供給される微量要素で間に合いますが,生長が早いと間に合わないようです。
欠乏の原因は,使用している土にありそうです。覆土用培土は高温で焼成しアルカリの強い土です。一応,pH調整はしていますが,金属イオンの吸収が阻害されやすいようです。実は,赤玉も水稲育苗用の粒状培土も熱を加えているので,このような症状が起こりやすいと考えます。この対策には,1)焼いていない山土や畑の深土を使う,2)微量要素を含むエコロングトータルを使うという2つの方法があります。なおエコロングトータルには,石灰が入っていないので,炭を必ず加えてください。
なお欠乏症の現れ方は,作物や品種によって大きく異なります。同じトマトでも,大玉系とミニトマトを比べると,前者の方が発生しやすいようです。

トマト苗の鉄欠乏症

高設栽培トマトのホウ素欠乏症

編集者 岡田益己

姫かりふⓇ 味が濃厚♬ 良い香り☆

2016年1月15日

早どりカリフラワーの姫かりふⓇ,特徴は濃厚な味と良い香りです.お料理するときのコツは味と香りを生かすこと♬

カリフラワーの天ぷら

姫かりふの天ぷら

  • 生でパックン!薄くスライスすると歯ごたえよく味と香りを楽しめます.お好みのドレッシングなどであえてお召し上がり下さい.
  • グリルでパックン!少し焼き色が付くと香ばしい香りがあたりに漂います.刻んだベーコンと炒めるとベーコンの塩味で十分味が付いて美味しく頂けますよ☆
  • 蒸してパックン!おかかとポン酢でさっぱりした食感を楽しめます。サラダと一緒にドレッシングでもどうぞ。蒸したてのカリフラワーのほくほくした食感と香りをお楽しみ下さい.
  • 揚げてパックン!ころもを浸けて時間をかけずにサッと揚げるのがポイント。付け塩やお醤油が姫かりふのほんのりとした甘みと香りを更に引き立て、酒の肴にもピッタリ☆

「味気のない」カリフラワーではありません!薄味で甘味と香りをお楽しみ下さい♬

編集者 松嶋 卯月

クッキングトマトを秋どりするコツ

2015年12月25日

「クッキングトマトは,お盆の頃に一斉にとれてしまって」という生産者のグチをよく耳にします。この夏には,「お盆過ぎから9月末まで,トマトを使った限定メニューを出したい」というレストランからの注文もありました。園芸振興班ではこの数年間,陸前高田の野菜畑で,種まきの時期や品種を変えて,収穫期を広げる方法を試みてきました。

早生品種「すずこま」を3月下旬から4月上旬にハウスで種まきし,4月下旬から5月上旬に畑に植えると,7月初中旬から収穫することができます。ところが種まきや植え付けを遅らせても,収穫期を遅くすることはなかなか困難でした。6月や7月に植えると暑さで小さいうちに花が咲いてしまいます。収穫期は多少遅くなりますが,収量が大幅に減ります。おまけに雨の多い時期の定植だから,多湿による活着の遅れや病気が追い打ちをかけて,昨年まではまともなデータがとれなかった。

今年(2015年)は幸い7月に雨が少なく,遅い植え付けの苗も順調に育って,例年になくきれいなデータがとれました。7月定植(6/17播種,7/16定植)は,6月定植(5/12播種,6/11定植)に比べて収量が50〜60%に減りましたが,収穫のピークが6月定植で8月下旬,7月定植では10月まで遅れることが分かりました。とくに品種“なつのこま”のピークは,10月中旬から11月初旬でした。“なつのこま”は暑さや多湿に弱いので,これまで高温期に定植すると,ほとんど育たずに終わってしまいました。この時期を乗り越えれば,本来の特性を発揮するようで,どうやら“なつのこま”を“あきのこま”と呼ぶ方がよいかもしれません。

7月中旬に定植すると10月に収穫できる

7月中旬に定植すると10月に収穫できる

今年の秋は暖かかったという印象が強く,そのためではないかと思うかも知れませんが,陸前高田の気象を見る限りそうではありません。9月と10月の平均気温は,2013年が17.8℃,2014年が16.0℃,2015年は16.2℃でした。秋どりのコツは,畑の水はけを良くして6月,7月の梅雨時に苗をうまく活着させ,その後の病害対策などの管理をしっかりすることです。また秋の低温下で果実の肥大と着色を進めるために写真のような割繊維不織布(商品名:ベタロン)によるべたがけをお奨めします。定植時から被覆すれば,遮光,虫除け,雨よけの効果も期待できます。生育初期の暑さ対策を重視するなら,目合いが1mm程度の防風網や寒冷紗がお奨めです。よく使われる長繊維不織布(パオパオ等)では,夏の高温による悪影響が出ます。

割繊維不織布で虫除け,雨よけ,生育促進,果実肥大・着色を図る

割繊維不織布で虫除け,雨よけ,生育促進,果実肥大・着色を図る

植え付けを遅らせると収量は確実に下がります。だから2条植えの方が良いと考えられますが,2条植えにすると果実が小さくなったり,株当たりの収量が1条植えの半分以下に減ることもあります。この傾向はとくに“すずこま”で顕著でした。畑に余裕があれば,欲を出さずにベッドを広々と使ってください。

編集者 岡田益己

入門者用夏どりイチゴの栽培システム

2015年4月28日

夏の暑い時期は国内でのイチゴの生産が難しい。このためとくにケーキ用のイチゴが不足して、多くは海外から輸入している。品種や栽培技術が進歩しても、夏の暑さは難敵だ。三陸沿岸の夏の涼しさを利用して夏イチゴを生産できたら、復興にも大きな力となるだろう。宮古の夏の気温(7,8月の平年値)は、亘理(東北一のイチゴ産地)よりも2℃、盛岡よりも1.5℃、札幌よりも0.5℃低い。

北三陸の夏は涼しい

北三陸の夏は涼しい

 

ところが岩手三陸沿岸には、イチゴの産地がないから、栽培の経験者がほとんどいない。そこで、1)四季成り性イチゴ品種と、2)もみ殻培地を利用して、初心者でも簡単に始められる栽培法を開発した。普通のイチゴ(一季成り)は短日植物だから、日が長くなると花が咲かない。夏にイチゴの花を咲かせるには、短日処理などの技術が必要だ。一方、四季成り性イチゴには、日が長くても花を咲かせる性質がある。品質や収量で一季成り品種にやや劣るものの、作りやすいという長所がある。詳しくはこちらを参照されたい。

初心者向けに四季成り性品種と組み合わせた技術がもみ殻培地だ。もみ殻培地は、もみ殻が70~75%、土が25~30%、炭の粉が3%、肥効調節型の被覆肥料からなる培地だ。当初は養液栽培のロックウールの代替として開発され、その後、野菜や花の育苗培土として普及した。詳しくはこちらを参照されたい。

この培地には、1)水はけが良いので、水のやり過ぎで根腐れを起こす心配がない、2)誰が管理してもそれなりに栽培できる(満点は取れないが合格点はとれる)、3)同じ組成で、いろいろな品目に広く使用できる、などの特徴がある。この特長を活かして、イチゴの高設栽培の培地に利用したところ、栽培経験が全くない学生でもそれなりに収穫できた。しかもイチゴの高設栽培に広く使用されるバークに比べて、夏の高温期でも根がしっかり発達した。

図2

培地に冷水を流したときには、バークともみ殻で根の発達に差がないが、冷水を流さないとバークでは根の発達が著しく劣る

 

さらにベッド本体を不織布で作ると、表面から水が蒸発するときに気化熱を奪い、地温が低下する。都合の良いことに、気化冷却の効果は温度が高いときほど大きいから、晴天日の最高地温は下がるが、最低地温には大きな違いがない。曇天や雨天の日も地温はあまり下がらない。暑いときだけ涼しくするというわけだ。先ほど三陸は夏の気温が低いと言ったがこれは30年間の平年値の話。三陸沿岸は年々の気温変動が国内で最も大きな地域の一つだ。やませが吹き込む寒い夏と、最高気温が35℃を超える暑い夏がある。暑さ対策を忘れてはならない。

図4

不織布でベッドを作ると、気温が高いときに地温が下がる

ベッドの幅は15cm、培地の量は1mあたりに15~16リットル。肥効調節型肥料(エコロング)の70日タイプと180日タイプを1m当たり各75g施用する。培地を半分ほどベッドに入れて、肥料を撒き、そこに1mあたり8株のイチゴを植え付ける。4月末に定植し、あとは水をやるだけで夏にイチゴを収穫できる。水やりもタイマーと風呂ポンプを使えば、ほぼ自動で管理できる。当初は1時間に3分の灌水を1日に8回、イチゴが大きくなって培地が乾いてきたら、1時間に4分~5分に灌水量を増やす。

不織布の気化冷却の効果は、試験に供した2品種とも現れたが、とくに暑さに弱いとされる品種「なつあかり」で顕著であった。「なつあかり」では、気化冷却が起こらないプラスチック製のコンテナに比べて、収量が3倍近く増加した。

図3

不織布ベッドで収量が上がる

 

2014年の春から雫石町のTさんと田野畑村のSさんが、この装置を導入して、初めての夏どりイチゴ栽培に取り組んでいます。Tさんは脱サラの新規就農、Sさんは菌床シイタケからの転作です。Tさんのなつあかりは雫石、滝沢、盛岡の洋菓子店で好評を得ています。また町内の産直に出荷すると瞬く間に売り切れの状況です。Sさんは、すずあかねを農協経由で首都圏に出荷しています。2014年の秋から、大槌町のAさんが冬春どりイチゴにもみ殻培地を使い始めました。春に紅ほっぺの収穫が始まりましたが、もみ殻培地のイチゴの味は、天候に左右されにくいと言っています。2015年の春から、八戸市のベテランイチゴ農家Kさんも、夏イチゴのベッドを全面的にもみ殻培地に換えました。安価で作りやすく味が良いのが理由です。

雫石町でなつあかりを栽培するTさん(右)

雫石町でなつあかりを栽培するTさん(右)

Tさんは、もみ殻高設栽培装置でクッキングトマト(すずこま)も栽培

Tさんは、もみ殻高設栽培装置でクッキングトマト(すずこま)も栽培

田野畑村のSさんは、菌床シイタケで使った可動棚を利用して高設栽培

田野畑村のSさんは、菌床シイタケで使った可動棚を利用して高設栽培

大槌町のAさんは、冬春どりイチゴにもみ殻培地を利用

大槌町のAさんは、冬春どりイチゴにもみ殻培地を利用


Kさんの紅ほっぺ

Kさんの紅ほっぺ

編集者 岡田益己

ミニカリフラワーをさらに小さく収穫する“姫かりふ®

2014年12月8日

最近、玉径が10cmくらいの小型のカリフラワーを店頭で見かけます。味が良く、大きさも手頃で売れ筋になってきました。

このミニ系の品種を小さいうちに収穫すると、さらに味が濃厚で、食感が良く、煮崩れしにくくなります。私たちがお奨めするサイズは6~8cmです。これを“姫かりふ”と呼ぶことにしました。「姫かりふ®」は岩手大学の登録商標です。東日本大震災からの復興を目的に被災地で生産する場合、岩手大学の承諾を得れば、この商標を無償で使うことができます。詳しくは、下記の連絡先までお問い合わせください。

これがお奨めサイズ

これがお奨めサイズ

姫かりふの栽培にはミニ系の品種を使います。私たちが使っている品種は、サカタのタネの美星とオレンジ美星です。128セルのトレイに播種して、1ヶ月ほどで畑に定植します。条間25cm×株間25cm程度で植え付けて、約2ヶ月後に収穫します。三陸沿岸では3月下旬に播種すると、6月下旬に収穫できます。早春の播種では、低温で花芽が異常に早く分化しないよう、ハウス内でトンネル被覆してください。夏~初秋に収穫する栽培では、1週間ごとに播種すると、切れ目なく出荷できます。秋~初冬向けの栽培では、2週間ごとに播種します。三陸の露地栽培では8月下旬が播種の晩限です。12月初旬までに姫サイズに育つと、その後は低温でほとんど大きくなりません。冬のあいだに寒さに当って、甘みが増します。この”寒締めカリフラワー”には美星が向いているようです。

夏は虫除けと暑さ対策を兼ねて、防風ネットや寒冷紗の被覆がお奨め

夏は虫除けと暑さ対策を兼ねて、防風ネットや寒冷紗の被覆がお奨め

イチゴの高設栽培用ベッドを利用して、株間10cmで栽培

イチゴの高設栽培用ベッドを利用して、株間10cmで栽培

連絡先: 岩手大学農学部 岡田益己 mok(アットマーク)iwate-u.ac.jp
(アットマークを@に変えてください)

 

編集者 岡田益己

超早っ!トマトラーメン

2014年8月20日

手軽なチ○ンラーメンもおしゃれな(笑)トマトラーメンに

手軽なチ○ンラーメンもおしゃれな(笑)トマトラーメンに

【材料:1人分】
クッキングトマト 2個 / インスタントラーメン(何でも可) 1袋
/卵(もし,あれば) 1個  /水 500cc

【作り方】
1.鍋に500ccの湯を沸かす。500ccのビール缶で一杯だな.
2.クッキングトマトのヘタのところをナイフでえぐり取る.ナイフでトマトのヘタから尻を通ってまたヘタまでぐるっと切れ込みを入れる.
3.沸いた湯にトマトを握りつぶし入れる。スプラッタ状態①.
4.インスタントラーメンを入れて解す.解していると,トマトの皮が浮いてくるので,取り除く②.皮はなるべく取り除いた方が旨い.面倒だったらそのままで(食べてるときに取っても手間は同じ).
5.麺が解れたら添付の調味料などを入れて(チ○ンラーメンのばあいはそのまま),あれば卵を割り入れて完成.

編集者 松嶋 卯月

簡単トマトクッキング(4種類)

トマトの皮をむいて,火を通すだけの簡単クッキングです!

トマトしゃぶだれ,めんつゆ

そば,そうめん,...のつゆに.

そのまましゃぶだれに,薄めると,そば,そうめん,...のつゆに.

みりんで煮て、めんつゆ(2~3倍濃縮)を加える.そのままでしゃぶだれ、薄めてそうめんのつゆに

トマトの味噌汁

味噌汁の具にピッタリ!

味噌汁の具にピッタリ!

味噌汁の具にピッタリです.玉ネギとよく合います.お試し下さい.

肉野菜炒め

トマトを加えた肉野菜炒め.彩りが良くなります.

トマトを加えた肉野菜炒め.彩りが良くなります.

肉野菜炒めに少し加えるだけです.簡単に美味しく,彩りも良くなります.

肉じゃが

クッキングトマトが加わるだけで驚きの美味さ!

クッキングトマトが加わるだけで驚きの美味さ!

肉じゃがにおすすめ.トマトから水が出るので、水は少なめに

編集者 松嶋 卯月